弁護士 伊﨑 翔
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 伊﨑 翔
近畿圏内の地方裁判所や家庭裁判所で裁判所事務官・裁判所書記官として勤務。在職中に予備試験及び司法試験に合格し、弁護士となる。裁判所での経験を活かし、多種多様な事件を取り扱っている。
「奈良県警から“ご家族を逮捕した”と連絡があった」
「家族が奈良市内の警察署に留置されている」
ある日突然、このような状況に置かれ、どうすればよいのか分からず不安になる方は少なくありません。
刑事事件は、誰にとっても無関係とは言えないものです。
刑事手続は、法律で定められた厳格な時間制限の中で進みます。特に、逮捕直後の対応は、その後の処分や身柄解放の可否を大きく左右します。
このコラムでは、起訴される前(被疑者段階)の一般的な事件の流れと、その中で弁護士がどのような役割を果たすのかを、分かりやすく解説します。
目次
【逮捕から勾留まで|運命の72時間】
逮捕された直後から、時間は刻一刻と進みます。
最初の約3日間(最大72時間)は、長期の身柄拘束(勾留)が決まる前の重要な局面です。
【逮捕・警察での取調べ(48時間以内)】
警察に逮捕されると、警察署の留置施設等に収容され、取調べを受けます。
警察は、逮捕から48時間以内に、事件と被疑者の身柄を検察庁へ送致(送検)しなければなりません。
この段階では、家族であっても面会できないのが通常です。
一方で、弁護士であれば逮捕直後から接見(面会)することが可能です。
弁護士は、
- 黙秘権などの重要な権利の説明
- 取調べで注意すべき点の助言
を行い、不利な供述調書が作成されることを防ぐ役割を担います。
【検察官送致・勾留請求(24時間以内)】
送致を受けた検察官は、被疑者を取り調べたうえで、24時間以内に引き続き身柄を拘束する必要があるかを判断します。
必要があると判断した場合、裁判官に対して勾留請求を行います。
【裁判官による勾留の判断】
裁判官は、被疑者と直接話をする「勾留質問」を行い、「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」などがあるかどうかを判断します。
これらのおそれがないと判断されれば、勾留請求が却下され、釈放される可能性もあります。
警察署や検察庁で手続が進む中、弁護士は、
- 意見書の提出
- 親族等による身元引受書などの資料提出
を通じて、
「住居や仕事があり逃亡のおそれはない」、「勾留の必要性がない」
といった事情を具体的に伝え、勾留を防ぐための働きかけを行います。
【勾留期間|最長20日間の攻防】
勾留が決定すると、原則として10日間身柄拘束が続きます。
さらに必要があると判断されれば、最大でさらに10日間の延長が認められることもあります。
逮捕から数えると、最大23日間拘束される可能性があります。
【取調べと供述調書のリスク】
この期間中、捜査機関による取調べが続き、「供述調書」が作成されます。
取調べは密室で行われるため、事実と異なる内容を認めてしまうといったリスクがあります。
そして、一度署名・押印した供述調書の内容を、後から覆すことは極めて困難です。
弁護士は、
- 定期的に接見を行い、取調べ状況を確認
- 供述内容について助言
を行います。
また、被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかが処分に大きく影響します。
弁護士は、
- 被害者との示談交渉
- 示談書、嘆願書の提出
などを通じて、不起訴処分の獲得を目指します。
【捜査の終結|起訴か、不起訴か】
勾留期間が満了するまでに、検察官は最終的な処分を決定します。
【主な処分の種類】
- 起訴
→ 裁判にかけられます。日本では、起訴されると有罪となる可能性が高いのが実情です。
- 不起訴
→ 裁判にかけられず、事件は終了します。前科はつきません。
不起訴には、
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
などの種類があります。
【最後に:奈良で刑事事件にお悩みの方はすぐにご相談を】
刑事事件は、スピードが命です。
特に、逮捕直後の72時間と勾留期間中の対応は、その後の人生を大きく左右します。
国選弁護人は、勾留決定後でなければ選任されません。
一方、私選弁護人であれば、逮捕直後から活動を開始することが可能です。
ご家族やご友人などが逮捕された場合は、一人で悩まず、できるだけ早く弁護士にご相談ください。



