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原状回復トラブルを防ぐ!賃貸オーナーが知っておくべき法律知識と実務

弁護士 伊﨑 翔

弁護士 伊﨑 翔

奈良弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 伊﨑 翔

近畿圏内の地方裁判所や家庭裁判所で裁判所事務官・裁判所書記官として勤務。在職中に予備試験及び司法試験に合格し、弁護士となる。裁判所での経験を活かし、多種多様な事件を取り扱っている。

賃貸物件の退去時に発生しやすい「原状回復」をめぐるトラブルについて、全国の消費生活センター等には賃貸物件に関する相談が多数寄せられていますが、そのうち「敷金・原状回復」に関するトラブルが3~4割を占めており、非常に問題になりやすい事案となっています。  

本コラムでは、賃貸オーナーの皆様が知っておくべき、原状回復の基本ルールやトラブルを未然に防ぐための実務上の対策について解説します。 

原状回復の基本原則

「原状回復」とは、賃借人が借りた当時の状態に100%戻すことではありません。 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。   

つまり、時間の経過による「経年変化」や、通常の生活で生じる「通常損耗」の修繕費用は、毎月の賃料に含まれているものと考えられ、原則として賃貸人(オーナー)が負担すべきものとされています。 

さらに、令和2年4月施行の改正民法(第621条)において、原状回復義務の対象から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」ことが明記され、通常損耗等については賃借人が原状回復義務を負わないことが法律上明記されました。 

賃借人に修繕費用を負担させる「特約」は有効か? 

原則として通常損耗や経年変化の修繕費用は賃貸人負担ですが、契約の際に一般的な原状回復義務を超えた部分につき、賃借人負担とする特約を設けること自体は可能です。  

しかし、賃借人に原則以上の特別な負担を課す特約が有効と認められるためには、以下の3つの要件を満たす必要があるとされています(最高裁平成17年12月16日判決等)。 

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること 
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること 
  3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること 

契約書にただ記載があるだけでは不十分であり、具体的な負担範囲や金額の目安を明記した上で、賃借人に対して口頭でしっかりと説明を行い、明確な合意を得ていることが重要です。 もし不当に高額であったり、説明が不十分で賃借人の利益を一方的に害すると判断されたりする場合、消費者契約法に違反するものとして特約が無効とされるリスクがあるため、十分な注意が必要です。 

トラブルを防ぐために

退去時のトラブルを未然に防ぐためには、以下のような対策が効果的です。 

入居時・退去時の確認

入居前からあった傷なのか、入居中についた傷なのかを明確にするため、入退去時に当事者立会いの下でチェックリストを作成・確認することが重要です。また、傷や汚れの状況を写真に撮って記録しておくことは、客観的な証拠として極めて有効です。 

契約時の説明 

契約時には「原状回復の条件に関する様式(ガイドライン別表3)」などを活用し、修繕負担の区分やクリーニング費用の目安等を事前に開示して、賃借人の十分な確認と了解を得るようにしましょう。 

おわりに

原状回復をめぐるトラブルは、契約締結時の十分な説明や適切な特約の設定、入退去時の証拠によってその多くを防ぐことが可能です。 当事務所では、賃貸借契約書のリーガルチェックや退去時のトラブル、敷金返還に関する交渉・法的対応などのご相談を承っております。賃貸経営における法務リスクに不安を感じられた際は、ぜひお早めに当事務所までご相談ください。