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借金の返済ができない場合、自宅は失ってしまう?持ち家を守るための選択肢とリスク

弁護士 芳林 貴裕

弁護士 芳林 貴裕

奈良弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 芳林 貴裕

奈良県出身。東大寺学園高校卒。京都大学法学部、同法科大学院を修了し、栃木県内の法律事務所にて企業法務案件等に携わった後、地元・奈良に戻る。事業承継や事業再生、廃業支援などの実務に幅広く従事している。

「借金の返済が苦しくなって、このままでは大切な自宅を失ってしまうのではないか…」

このような不安を抱えている方は、決して少なくありません。特に、住宅ローンを組んで持ち家を購入した場合、借金の返済が滞ると、自宅がどうなってしまうのか、大きな心配事になるでしょう。

このコラムでは、借金の返済が困難になった場合、自宅がどうなるのかについて、そして自宅を守るための具体的な方法やリスクについて、弁護士の視点から詳しく解説します。

1. 住宅ローンを滞納した場合

結論:最終的には自宅を失う可能性が非常に高い

金の返済の中でも、特に自宅に関わるのが住宅ローンです。住宅ローンを滞納した場合、自宅は最終的に競売にかけられ、失う可能性が非常に高いです。

(1)滞納から競売までの流れ

  • 滞納の開始:返済期日を過ぎても返済がない場合、金融機関から督促の連絡や通知が届き始めます。
  • 期限の利益喪失:滞納が3〜6ヶ月続くと、金融機関から「期限の利益の喪失」が通知されます。これは、それまで分割で返済する権利を失い、住宅ローンの残額全てを一括で返済しなければならなくなることを意味します。
  • 保証会社による代位弁済:多くの場合、住宅ローンには保証会社がついています。期限の利益を喪失すると、保証会社があなたに代わって金融機関に残額を一括返済します(代位弁済)。これにより、債権者は金融機関から保証会社に代わります。
  • 競売の申立て:保証会社は、代位弁済によって取得した債権を回収するため、裁判所に自宅の競売を申し立てます。
  • 競売の開始:裁判所は、競売の申立てを受理すると、自宅を差し押さえ、競売にかける手続きを進めます。最終的に、自宅は競売によって第三者の手に渡り、あなたは自宅を明け渡さなければなりません。

住宅ローン以外の借金はどうなる?

住宅ローン以外の借金(カードローンや消費者金融からの借り入れなど)の返済が滞った場合でも、債権者は裁判を通じて自宅を差し押さえることがあります。ただし、住宅ローンのように、自宅を担保にしているわけではないため、直ちに競売にかけられるわけではありません。しかし、法的な手続きが進めば、最終的に競売の対象となる可能性はあります。

2. 自宅を守るための選択肢

借金の返済が困難になっても、自宅を守るための方法はいくつか存在します。

(1)任意整理

任意整理は、債権者と直接交渉し、将来の利息をカットしてもらったり、返済期間を延長してもらったりして、毎月の返済額を減らす手続きです。

  • メリット:対象とする借金を選ぶことができるため、住宅ローンを任意整理の対象から外し、それ以外の借金のみを整理することで、自宅を守ることができます。
  • デメリット:住宅ローン自体を任意整理することは困難です。また、すべての債権者が交渉に応じてくれるとは限りません。

(2)個人再生

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年かけて再生計画に基づいて返済していく手続きです。

  • メリット:「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度を利用することで、住宅ローン以外の借金だけを減額し、住宅ローンはこれまで通り返済を続けることで、自宅を守ることができます。
  • デメリット:手続きが複雑であり、安定した収入があることが条件となります。また、住宅ローンの金額や残高が、一般の債務整理で減額される借金の金額を上回る必要があります。

3. 個人破産(自己破産)を選択した場合

結論:原則として自宅は処分される

個人破産は、借金をゼロにする手続きですが、住宅ローンがある場合は、原則として自宅は失います。

(1)住宅ローンの取り扱い

個人破産は、全ての借金を免除してもらう手続きであるため、住宅ローンもその対象となります。住宅ローンを免除してもらう代わりに、担保となっている自宅は債権者によって処分(競売)されます。

(2)持ち家以外の財産は?

自宅以外にも、高価な車や高額な預貯金なども処分される可能性があります。ただし、生活に必要な最低限の財産は自由財産として手元に残すことができます。

(3)家族名義の自宅はどうなる?

自宅が家族名義である場合、原則として破産手続きの対象にはなりません。ただし、破産者が実質的な所有者であると判断されたり、破産者の財産で購入されたと見なされたりした場合は、調査の対象となる可能性があります。

まとめ:自宅を守るために、早期の相談が鍵

借金の返済が困難になったとしても、「もうダメだ…」と諦める必要はありません。住宅ローン以外の借金であれば任意整理、住宅ローンも抱えている場合は個人再生という選択肢があります。

重要なのは、問題が深刻化する前に、できるだけ早く弁護士に相談することです。

一人で悩みを抱え込まず、まずは専門家である弁護士に相談してください。あなたの状況に合わせた最適な解決策を見つけ出し、大切な自宅を守るためのサポートをいたします。

お気軽にご連絡ください。

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