公開日: 2025.09.26
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自己破産すると家族や会社にバレる?心配を解消するための真実

弁護士 芳林 貴裕

弁護士 芳林 貴裕

奈良弁護士会

この記事の執筆者:弁護士 芳林 貴裕

奈良県出身。東大寺学園高校卒。京都大学法学部、同法科大学院を修了し、栃木県内の法律事務所にて企業法務案件等に携わった後、地元・奈良に戻る。事業承継や事業再生、廃業支援などの実務に幅広く従事している。

借金問題に苦しんでいる方が、自己破産を検討する際に、最も大きな不安の一つとして挙げるのが「家族や会社にバレてしまうのではないか」という点です。

「自己破産したことが知られたら、家族に迷惑をかけてしまうのではないか」「会社をクビになってしまうのではないか」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せない方も少なくありません。

このコラムでは、自己破産が家族や会社にバレる可能性について、弁護士の視点から正直にお伝えします。そして、無用な心配をせず、安心して手続きを進めるための方法についても解説します。

1. 家族にバレる可能性

結論:同居の家族にはバレる可能性が高い

結論から言うと、同居している家族に自己破産がバレる可能性は、残念ながら高いと言わざるを得ません。その主な理由は以下の通りです。

(1)必要書類の準備

自己破産の手続きには、世帯全員の住民票や、同居家族の収入を証明する書類(給与明細や源泉徴収票など)が必要になる場合があります。これらの書類を準備する過程で、家族に尋ねたり、無断で書類を借りたりすることが難しいため、不自然に思われる可能性が高いです。

(2)財産の処分

高価な財産(自宅や自動車など)がある場合、それらが手続きの中で処分されることになりますが、この手続きを隠すことは非常に困難です。

家族にバレないようにする方法はある?

残念ながら、同居の家族に完全に隠し通すことは、現実的に難しいのが現状です。

しかし、別居している家族や親、兄弟には、意図的に話さない限り、自己破産がバレる可能性は低いです。戸籍に自己破産したことが記載されることはありませんし、自己破産が家族に自動的に通知されることもありません。

2. 会社にバレる可能性

結論:バレる可能性は低いが、ゼロではない

会社に自己破産がバレる可能性は、家族にバレる可能性に比べて低いと言えます。しかし、いくつかのリスク要因が存在するため、注意が必要です。

(1)官報への掲載

自己破産が決定すると、国の機関紙である官報に、破産者の氏名、住所などが掲載されます。官報は一般の方が日常的に目にするものではないため、会社関係者が偶然これを見つける可能性は極めて低いでしょう。ただし、一部の金融機関や信用情報機関が官報の情報をチェックしていることはあります。

(2)退職金の証明書類

自己破産の手続きでは、退職金の金額を証明する書類の提出が求められることがあります。通常、会社に依頼すれば発行してもらえますが、その際に「何のために必要か」と聞かれ、答えに窮してしまう可能性があります。

(3)特定の職業の資格制限

自己破産の手続き中は、特定の職業(弁護士、公認会計士、警備員など)に就くことが制限されます。これらの職種の方は、会社に説明する必要が出てくるため、必然的に自己破産がバレることになります。

(4)会社からの借り入れ

会社から借金をしている場合、自己破産の手続きの中で、会社も債権者として扱われます。弁護士から会社に受任通知が送付されることになり、この時点で自己破産を検討していることが会社に知られてしまいます。

3. 自己破産を隠すことのリスク

家族や会社にバレるのを恐れて、自己破産を隠そうとする方がいますが、これは非常に危険です。

(1)虚偽の申告

手続きに必要な書類を偽造したり、財産を隠したりする行為は、免責不許可事由(破産法252条1項1号、6号)に該当し、自己破産が認められなくなる可能性があります。

(2)手続きの長期化

書類の準備や手続きを一人で進めようとすると、手間や時間がかかり、結果的に手続きが長引いてしまいます。

(3)精神的な負担の増加

家族や会社に隠しながら手続きを進めることは、多大な精神的ストレスを伴います。専門家である弁護士に依頼することで、こうした負担は大幅に軽減されます。

まとめ:大切なのは、専門家に正直に相談すること

自己破産が家族や会社にバレる可能性は、残念ながらゼロではありません。しかし、そのリスクを過度に恐れて、借金問題を放置することは、さらに状況を悪化させることにつながります。

  • 同居の家族にはバレる可能性が高い。
  • 会社にバレる可能性は低いが、特定の職種や状況ではリスクがある。
  • 意図的に隠そうとすると、手続きが失敗するリスクがある。

大切なのは、一人で悩みを抱え込まず、弁護士に相談することです。あなたの状況を正直に話せば、バレるリスクを最小限に抑えるためのアドバイスや、具体的な対策を一緒に考えることができます。

家族や会社への影響についても、個別の状況に合わせて詳しくご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

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